茶の湯の心と形(2)
「いっしょに心地良いひと時を過ごしたい」っていうのが、私の願いですね。
それで、居心地が悪くなるような要素は除きたいです。
さて私は、茶の湯がとっても好きですけど、足が痛くなることがあって困りものです。
そして、若い人や、もっと弱年の小中学生なんかは、「正座」が嫌だから茶の湯を避けちゃうってことも多いかなあと、心が痛みます。
・ ・ ・ が、茶の湯でずっと座ってきた人でも、年齢を重ねて足が痛くなり、茶の湯ができないなんてことを聞きますと、もっと心が痛みますね。
それで、ある記事を見ましたので引用します。
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年を取って正座が難しくなっても茶の湯を楽しんでもらおうと、山口県下関市の表千家流茶道教授、和田虔二郎さん(79)が稽古場の茶室に堀型の席を設けて指導している。
2021年9月には、堀型席でも茶をたてられるテーブル「立礼卓」も手作りした。
「『正座できないと茶道はできない』と思っている方も多いが、そんなことはない。
もっと多くの人にお茶に親しんでほしい」と願う。
きっかけは22年前、当時88歳だった和田さんの師匠、母宗掬さん(故人)の悩みだった。
「正座すると脚が痛くて、お茶を続けられそうにない」。
宗掬さんはその頃、椅子に座って指導していたが、それでは正座した生徒や客人を見下ろす形になる。
心苦しさを口にする宗掬さんを見て、和田さんが思いついたのが堀型の席だった。(以下省略)
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私は添付されている写真も見ましたけど、全く良い発想だなあと思いますし、参考になることです。
では最後になりましたが、柄杓を引いた後に亭主が一礼する意味についてです。
「客ニ、ロクニゴザ候ヤウニト、時宜を云」、また、同様の趣旨が、いくつかの昔の本に書いてあるようで、「ロクニゴザ候ヤウニ」の部分を意訳すれば、「正座じゃない座りかたに直して、楽にして下さいますように」ということでして、「ロクに」とは、膝を崩して楽にすることや、あぐらをかくことを言いますね。
そして、「時宜」という言葉ですが、もともとの意味は「ちょうどよい時」ということでしたが、やがて「辞儀」と表記されるようになりまして、今では「お辞儀をする」の意味で使われると思います。
それで、今日紹介した文の意味ですが、柄杓を引いた直後が、「どうぞお楽に」を言うのに最も適切であり(「言」の代わりに「云」という字が使われてます)、そのタイミングで「お楽に」と挨拶してお辞儀をするということであろうと解釈しますが、次回は「どうぞお楽に」に関して別の話を。